数を作れるからこそ、立ち止まる

分かれ道でどちらに進もうか悩んでいる人のイラスト

AIを使えば、音楽は驚くほど簡単に、そして大量に作ることができます。
テンポもジャンルも雰囲気も、いくらでも変えられる。
自分の中の「こうしたい」という意志がなくても、それっぽいものはいくらでも生まれてしまいます。

だからこそ、私はときどき立ち止まるようにしています。

AIで創作を始めたばかりの頃、私はいろんなことができるのが嬉しくて、テンポの違う曲、ジャンルの違う曲、さまざまなスタイルの音楽を次々と生成していました。
でも、ふと見返してみたときに、「これ、誰のための音楽なんだろう?」と思う瞬間があったんです。

たくさん作れる。なんでもできる。
でも、その「なんでも」は、自分が本当に届けたいこととは限りません。
AIの自由さに頼りすぎると、いつの間にか自分が“何者か”を見失ってしまうことがあります。

「便利だから」「簡単だから」で進んでしまうと、やっている本人に“軸”がないまま、どんどん広がっていく。
その結果、受け取る側も「この人、結局どんな音楽を届けたいの?」と感じて、離れていってしまうことがあるかもしれません。

だから私は、「何を届けたかったのか」「何を作りたかったのか」を、自分に問い直す時間を大事にしています。
勢いに任せて量産するのではなく、いったん止まって、方向を確かめる。
これは、AIという強力なツールを使うクリエイターにとって、きっと必要な“ブレーキ”なのだと思います。

AIがなんでもやってくれるからこそ、「自分はなにをやりたいか」が、よりはっきりしていないといけない。
立ち止まって見直すことで、もう一度、届けたい気持ちや、自分の作る意味が浮かび上がってきます。

数を作れる時代にこそ、数に頼らず、意味や一貫性を意識することが、クリエイターとしての信頼につながる
そう信じて、今日も私は、自分のペースで音と向き合っています。